離婚した日に妻の傘を持って行かれた話

 妻と別居した日にあったトラブルの一つに、妻がお互いのビニール傘を取り違えて、私のビニール傘を持って帰ってしまったことがある。後で揉めたら嫌だなと思い妻にLINEを送ったのだが、この時の妻のLINEが私を本当に嫌な気分にさせた。

 

 この日のやり取りは、わずかに妻に残っていた情と、幸せにしてあげられなくて申し訳なかったという気持ちを雲散させるには充分だったし、離婚して良かったと心の底から思えた。離婚届を提出する日が本当に待ち遠しかったし、早く縁を切りたかった。

 

  離婚届を提出した日、私は妻とほとんど話をしなかった(話をすることが本当に嫌だった)。離婚届を提出し終わった後、妻は「何か私に言うことはないの?」と聴いてきたが、私は「ありがとう、気を付けて、さようなら」とだけ言った。今日が妻と会う最後の日だった。  

 

 同じ日の午後、引っ越し先の内見に行った時に、妻のビニール傘は誰かが取り違えて持って行ってしまった。不動産屋さんの人は平謝りだったけれど、内心「逆にありがとう」と思った。あとは引っ越しさえ済ませてしまえば、やっと全部終わる。